大雪山の沢登り〜トムラウシ川とワセダ沢(後編)

(再掲)コース図 我々は下方のワセダ沢班

(再掲)コース図
我々は下方のワセダ沢班

さてヒサゴ沼を目指して、我々は地獄谷からワセダ沢を詰めて行きました。その続きです。
滝の連続を乗り越えてさらに1時間くらい行くと、水も減っていよいよ源頭部に至ります。このあたりまで来ると、水流はほとんどなくなり高山の花たちが急に目立ち始めます。

雪渓の脇に沿うように、安定した岩を選んで踏み登っていきます。小さな花の美しい姿が元気づけてくれます。今はエネルギーを呼吸と足に集中させ、登ること以外何も考えないようにします。

最後の急斜面はボロボロと崩れやすい砂のようなザレ。緊張します。クマのように手足で踏ん張り、這うようにしてじっくり登りきると、そこに静寂の別世界がありました。

トムラウシ山と北沼が目の前に悠然と現れたのです。しばし時間が止まった様な錯覚に襲われて、出るのは溜め息ばかり。そよそよと風が頬を撫でる。静かです。なんと安らぐ心地であることか。

静寂に包まれた真昼のトムラウシ山と北沼

トムラウシ山と北沼が静かにたたずむ

休憩してトムラウシ山頂への往復を考えましたが、体力的にきつかったので今回は割愛して、一路ヒサゴ沼へ向かうことにしました。(山頂へは往復で一時間少し)
沢靴を履き替えて、乾いた靴下に足を包む、それだけで新鮮な気分と元気が湧いてきました。
登山靴ではなく軽シューズなので足をひねらないよう慎重に歩きます。心も足取りも軽くよい気分です。青空、そよ風、美しい午後の日差しと、広大な山の景色。

北沼からヒサゴ沼までは約2時間。17時までには着けるでしょう。少し遠回りですが分かりやすい道を行きます。(地図にはヒサゴに至る短縮ルートが記載されていますが、歩いていても分かりませんでした)
早くも西に傾きかけた日差しを受けて、秋の気配も濃い登山道を進みます。足はまだ元気です。
化雲岳下の分岐で東へ向かい、ガレを乗り越えて、雪渓を慎重に下ります。

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ヒサゴの夕暮れ

16時半にヒサゴ沼に到着しました。尾根チームの仲間が先に着いて、テントを張って既に盛り上がっていました。我々は3つの沢班の中で一番乗り。何も競争ではありませんが少し嬉しい。
尾根班から頂いた温かい汁物が疲れた体に嬉しく沁み渡ります。我々もテントを張ってゆっくり休憩、食事の支度です。

夕方の光の中、ヒサゴの静かな水面には周りの山と雪渓がきれいに映っていました。私にとって忘れ得ぬ安らぎの光景が、またひとつ増えたなと思います。

翌日は、当初の予定である沢下りをやめて、夏道を下りました。登りの沢の様子から、時間がかかり過ぎると判断したのです。それは正解だったと思いますし、オコジョにも出会えました。

***

山の旅は本当に素晴らしい。特に大雪山の懐に深く抱かれたこの三日間は、改めて私にそのことを教えてくれました。今更ながら、私はやはり山が大好きなのだという思いを嬉しく噛み締めた旅でした。大雪山のこの自然がこれからも変わらずに人々を包んでくれることを神様に祈ります。
(終)

大雪山の沢登り〜トムラウシ川とワセダ沢(後編)」への2件のフィードバック

  1. やっさん 投稿作成者

    お茶と蜜柑さん
    ええ、行者のように質実剛健で、故郷の山に溶け込むような自然な山歩きでしたね。一度、真富士山にもご一緒させてもらったのを思い出しますよ。
    竜爪山は懐かしい山です。山中に神社が(穂積神社?)あったと記憶しています。
    また一緒に南アルプスを歩いてみたいですね、お互い生きているうちに(笑)。
    娘さんも将来山が好きになると嬉しいですね。行者にはならずともね。

    返信
  2. お茶と蜜柑

    北海道の山もいいですね。生きている内に行ってみたいです。南アルプスへ誘っていただいてから山好きになり、しばらくは行者のような山登りをしていましたが、試験勉強の為に中断したまま、数年が経ってしまいました。現在、一人事務所のため、なかなか時間が取れず再開できずにいます。でも、今年は娘を山(竜爪)に連れてゆく約束をしたので、これを機にまた山に向かいたいと思います。

    返信

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