北海道の山」カテゴリーアーカイブ

大雪山・クワウンナイ川遡行の記

「北海道の屋根」大雪山、その最奥に位置するトムラウシ山は「遥かなる山」と呼ばれ岳人の憧れである。

7月、高山に花が咲き乱れる季節に、私は山仲間2人と共にこの山を目指した。
美しいナメ滝で有名なクワウンナイ川を遡行して山頂に至る計画で、私の胸は高鳴っていた。そしてこれ以上ない好天にも恵まれて、まさに忘れ得ない山旅となったのである。

「遥かなる山」トムラウシ

「遥かなる山」トムラウシ山

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沢登り

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この夏、私の「マイブーム」は沢登りである。
所属している山岳会の大先輩たちと一緒に、滝を登り岩をよじり、時には淵を泳いだり。
背丈を超える笹薮の中を煤だらけになって漕いで、山頂へ至る。

沢登りは登山道のない時代の原始的な山の世界を楽しむ、ある意味贅沢な趣味だ。
だがその自然度の高さゆえに甘えの許されない緊張と背中合わせである。
登山をする人は多いが、この魅力に目覚めるかどうかは、人それぞれであろう。

一昔前の登山ブーム時代には男女を問わず沢登りを楽しんでいたが
昨今の「山ガール」ブームが「沢ガール」へと移行するかどうかは微妙である。


先日、支笏湖にほど近い漁岳(いざりだけ)という山へ沢登りをしてきた。
この山には春の残雪期に一度スキーで登ったが、そのときに聞いた夏の沢登りの話が心に残り、今夏それが早くも実現したことをとても嬉しく思った。

技術的に難しい沢ではなく、しかも渓谷の様相が大変美しく、山頂の眺めもいい。
深い淵の緑色は溜め息がでるほどだった。


沢登りは魅力的だ。
誰もいない河原でのキャンプと焚き火。釣った魚で飲みながら語り合う夕べ。
ごつい岩をよじ登り、滝の飛沫に打たれ、函を泳いで川水で全身を濡らして
虫やクモの巣、濃い笹薮をかき分けて、ハイマツの松脂にまみれて目指す山の頂。
沢から山を登っていくときの感覚は、普段私たちが忘れている何かを確実に刺激する。


合理的思考と原始的直感が渾然一体となるそのとき、「至上の知」の形が現れる。
その体験は、私たちが生きていることの本質に深く関わっているように思う。

(photo: 漁川遡行中の美しい淵)

クマを探した夏

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今年はあの尾根から探してみよう、あの沢に張ってみようなどと思いを巡らした夏の大雪山。
豈図らんや、誰もが驚くとんでもない集中豪雨に見舞われて、道内各地で道路の崩壊や洪水だらけ。
入山にも危険が生じ、考えていた撮影計画はほとんど白紙に戻さざるを得なくなった。

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