マガンの秋

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宮島沼が大賑わいの季節である。

美唄市にあるこの池は、シベリアから渡ってきたマガンたちが
本州へ渡る前にひととき羽を休める一大拠点だ。
多いときは6万を超えるという数が集結する。

ここ数年やや減少気味だとも聞くが、どうなんだろう。

このたくさんのマガンたちが、
夜明けとともに一斉に湖面から飛び立つ様はまさに壮観だ。
幾たびかの鳴き交わしが盛んに行われた後
羽ばたきは突然起こる。

数千、いや数万羽が黒い雲のように水面から湧き上がる。
轟音は天まで届かんばかり
黎明の空気を振るわせるその響きは
スサノオの天の詔琴もかくやと思わせる。

興奮の一大イベントであるが、いつもこの一斉のねぐら立ちが
見られるとは限らず、ちょぼちょぼと小分けになることも多い。

(脅かすと一部が慌てて飛んだりして乱れるので、なるべく
近づかずに観察しましょう。)

小学生の頃、「大造爺さんと雁(がん)」というお話を国語の教科書で読んだのを覚えている。
羽の一部の白い模様から「残雪」とあだ名されている賢いリーダー雁と、猟師の大造爺さんの、毎年繰り返されるかけひき合戦、頭脳戦。

ある年、連れ合いの雌の雁が怪我をして動けないのを守ろうとして
大造爺さんの前で逃げずにじっとしている「残雪」を見つけた爺さんが
「よきライバル」を撃たずに逃してやるという、いい話だったと思う。

マガンの季節にはこの話を思い出して懐かしい気持ちになる。
食えー、食えーと大声で鳴いているマガンだが、なんだかホロリとして
食指を動かす気持ちにはなれそうもない。

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