軽薄で無責任な情報の氾濫が、猛威をふるっている。
わが国のエネルギー政策の根幹に関する大切な問題が
「子ども達を守れ」、「原発のない安全な社会へ」
こうした抽象的で感情的なスローガンで覆いつくされている。
思考はヒステリックな「正義」の煙にまかれて機能停止し
本当に必要な現実的な議論ができない状況が続いている。
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原発の存廃は、今後日本社会が凋落せずに存続できるかどうかの
極めて現実的な経済産業の問題である。
だが「放射線の恐怖」に関するニュースばかりが毎日流されて
原発廃止デモがいちいち丁寧に取り上げられるのに対して、
原発がいかに日本の産業に大事かという現実的な話は実に少なく
どうにか誰かの小さなつぶやき程度にしか聞こえてこない。
なんと不公平で偏った報道だろうか。
いつもそうだが日本のマスコミは事実を伝えるよりも
人々の恐怖心を煽ることが仕事だと思っているらしい。
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ところで私は日本のエネルギーが原子力でなくてもいいと思う。
代替エネルギーがあるなら長期的な計画で原発を減らしていけばよい。
だが「危険だから今すぐ停めろ」とはひどいヒステリーだと思う。
太陽光発電など実現には何十年かかるか知れたものではないし、
これまで培った高い原子力技術の蓄積をあっさり放棄するなど論外だ。
それこそ子孫に申し訳がないだろう。
それにしてもいつまでこんな不毛な莫迦騒ぎが続くのだろう。
放射線を怖がる心理だけに囚われる知性の欠如を恥じないのはなぜだ。
こういうときこそ冷静に現実を見据えた政治を行わなければならないのに。
子を心配する母の心理、それだけでは一国の運営はできないのに。
日本人はなぜこんなに臆病になったのか。悲しい。
かつての日本人はこんなことはなかっただろう。
支那戦線を戦った私の祖父ならば何と言うだろうか。
「まず腹を括りなさい」
「このくらいのことでビクビクするもんじゃない」
というだろう。そう、少なくとも男ならそうでなくちゃ。
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こういう乱世にはセコい悪が跋扈するものだ。
この夏、再生可能エネルギーを電力会社に買い取らせる法案が
菅直人氏と孫正義氏の会談から生まれてきたことは既知の話である。
(この日を境に菅氏は喜色満面で「脱原発」を叫び始めた)
大震災と原発の事故を、あくまで他人の不幸として受け止めて己の利益につなげようという卑しい商売根性が日本を食い物にしているように思う。
原発反対(闇雲な廃止論)を主張する人から、「自分達は・・%の節電を続けるから廃止してくれ」とか、「雇用流失で自分が失業することになろうとも廃止だ」という声は聞こえてきません。
≪Aの道をとるならばBの問題を避けて通れない≫といった全体像を理解しようとせず、自分に都合のいい事実だけで世界観を構成しているということでしょうか。
この有様は、現憲法を盲目的に信奉する人達の考え方(というよりむしろ思考停止)と同じように思います。頭の中は、現実から目を背けた空想の世界にあるようです。
他の問題でもそうですが、絶対の、100%の安全を【他人には】求めるなんて、自己中のなせる業ではないでしょうか。
(2011.10.25 09:46)