尖閣問題、その意味するもの(前)

Yezo-Shika-002

ワシントンで石原都知事が「尖閣を買います」と表明したのが4月中旬。
爾来数ヶ月、国民の静かなる熱望が形となって溢れ出し、都への寄付金はすでに13億円を超えた。
大新聞や地上波は敢て報ぜずとも、ネット上では毎日のように関連情報が飛び交う。

中国政府の傲岸不遜な態度、それに憤懣やるかたなき者、臆する者、また冷笑する者・・
中には不穏で煽動的コメントも多数流され、外国による情報工作活動の盛んなるを見る。
ネット上はさながら足の踏み場なき雑踏、信頼すべき情報を選ぶに困る有様だ。

何ごとも判断に迷ったときには、常識に立ち返り根本から考えることが肝要。
あの小さな島々がなにゆえこんな大騒ぎの元になっているのかを、正しく知ることだ。
人や国がここまで実際に動いている、そこには必ず重大な意味がある。

尖閣諸島が海底資源の豊富な地域ということは既に知られている。
中国共産党政府は、1960年代から唐突に自分の領土だと言い出した。
最近では「核心的利益」と呼び、確保のためには戦争も辞さないと鼻息が荒い。

だが尖閣諸島のもつ意味はその程度のことではない。
資源のためだけでこれほど長期にわたる執拗な挑発をしてくるものではない。

この問題の本質は、中国の領土拡張主義とその未来戦略にある。
米国と互角に太平洋を支配せんとする、彼らの長期的な軍事戦略の一環なのだ。

試みに世界地図を逆さまにして見よう。上海辺りから太平洋をみる。
大陸から太平洋に出て行こうとすれば、大なる地理的障碍は日本列島と沖縄南西諸島である。

実は尖閣を狙い始めた当初から、中国は「琉球奪還」(沖縄を日本から独立させ中国のモノにする)を唱えてきた。
沖縄を独立共和国として、台湾共々奪い取り、太平洋に確固たる勢力を拡大する狙いだ。

そして現在、沖縄のマスコミは中国政府の手先と化した観がある。

「米軍基地反対!」「集団自決は日本軍による強制だ!」「琉球は日本ではない!」

歴史の偽造と感情論を巧妙に組み合わせた偏向報道が沖縄県民に反日意識を刷り込んでおり、思想工作は着々と進行中である。

ごく最近では、普天間基地へのオスプレイ配備に対する報道も顕著な例だ。
メディアは「地元の声」として配備への感情的な反対意見ばかりを報道する。
だが実情はそんなに単純ではなく、オスプレイの能力は防衛戦略上必要なものである。
沖縄の人々は米軍の存在と折り合いながら懸命に平穏に暮らす努力をしてきた。
テレビ映像で強硬に基地反対を叫ぶのは、実は本土から乗り込んだ左翼活動家ばかりだという。


私はこの5月に沖縄を訪問し、祖国復帰40周年記念大会にも参加させていただいた。
地元の方々は大戦中の日本軍を立派な方達だったと今でも尊敬し、異口同音に言う。

「私たちはどこを切っても日本人なんだ。中国人に侵略されたくない。」
「わが国が早く国防体制を確立して、米軍基地との軋轢を解消する日を願っている。」

これが、左翼マスコミが伝えない沖縄の人々の本当の声だ。
彼らは本土の私たち以上に真の日本人なのである。


ある日突然、中国軍が尖閣諸島に上陸したら、日本政府は果して何かできるだろうか。

今の憲法は外国に攻められたときのことを全く想定していない。
憲法9条は国際紛争解決のための武力行使を禁じている。
尖閣は小さな島であるが、れっきとしたわが国の領土だ。
それをもし外国に無抵抗に獲られたとしたら、その意味するところは重大である。

いわば日本という独立国は世界に存在しません、と自ら宣言することに他ならない。
ひとつの国家が独立を維持することがどれほど努力を要することであるか。
その重さを今多くの世人は認識せず、ただ我が身ひとつの処世の心配にとどまる。
それを「仕方ないじゃん」と一言に付す安易な風潮が長きにわたり続いてきた。

だがそんな卑小な考え方がいつまでも通用するはずもない。
我々はときおり時代の節目をほのかに感じとる。

公のことをきちんと考えたい、そのために正しい知識を得て判断したい。
マスコミの言いなりになってムードやブームでの投票なんかしたくない。
そんな雰囲気が最近少し感じられるのは、よい傾向である。


卑小な個人主義の自惚れを脱し、歴史の先人の努力と思いを素直に偲び同調することで、歪められた世界の姿をリアリティをもって大きく捉え直す時がきている。

尖閣諸島の問題は、私たちに国の大切さを素直に教えてくれている。
私たちはこれを予期せざる奇禍ではなく、むしろ来るべき転機たる奇貨として捉え、これからの日本の進むべき一つの指針をそこに見るべきであろう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください