月別アーカイブ: 2010年2月

厳冬の原野にて(2)

100129-D-164

先月から数えてもう7回目の撮影になる。
僕の狙いは冬の猛禽「ハイイロチュウヒ」だ。
数が少ないことや、警戒心が強いことなどから
日本で見られる野鳥の中でも撮影が難しい部類に入るだろう。
そして技術的な面からも、多くの野鳥カメラマン泣かせの鳥である。

その名の通りグレイの背中と頭が特徴的で、対照的に白い腹部と先端が黒い羽。
一度見ると忘れられない美しい姿であるが、
この鳥を撮影するのが難しい理由は、まさにこの羽毛の色にある。

一面灰色(グレイ)という配色は、実にピントが合わせにくいのである。
かといってコントラストのある羽の先端(白に黒)に合わせると、肝心の顔がぼけてしまう。

チュウヒ類は軽い体で舞うように低空を飛び、葦(ヨシ)原の中でネズミを捕る。
動きが速いうえ、この葦が画面の邪魔をすることも、この鳥の撮影難度が高い理由だ。
ピントに関してはAF(オートフォーカス)レンズを使っている人にはお手上げだろう。
(僕は古いマニュアルレンズを使っているので、この点では有利かも知れない)

自分の目と指先でしっかりと動きについていかねばならないが、何とかしてみせる。

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そんなわけで、ハイイロチュウヒ(略してハイチュウ)という猛禽は、まさに挑戦しがいのある相手だ。
数が少ないと書いた通り、今年のこの地方にはわずか2羽しか確認されていない。
南北12キロに及ぶ海岸線の原野のどこにいつ現れるかもわからない。撮影は第一に運が必要だ。
神様との根比べ・・そんな言葉がぴったりくる。

この鳥に魅せられて、先月はほとんどこの原野での撮影となってしまったが、
冬の猛禽が見られる季節はそんなに長くはない。なんとか胸のすくような一枚をモノにしたいと思う。

(写真:ハイイロチュウヒ雄)

厳冬の原野にて(1)

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冬の日高地方は晴れる日が多い。
日本海を越えて吹き付けるシベリア颪(おろし)が
列島の脊梁山脈にぶつかり雪を降らす。
水気を降り落とした乾いた風が、太平洋側に吹き下りてくるのだ。

天気はよいが、そのかわり冷え込みは厳しい。
断熱効果を持つ雪のブランケットのない、むき出しの原野の寒さは
撮影中の夜を車で過ごす僕にはいつも厳しいものだ。

夜はエンジンを切り、登山用の羽毛寝袋に毛布をかけて潜り込む。
明け方は車の中でもマイナス10度まで下がり、呼気で毛布の襟元は凍り付く。
(道東地方での撮影は、さらに羽毛かけぶとんを必要とする)
そんな状況だから朝は寒さで4時頃目が覚める。
懐に抱いて寝たガスカートリッジ「コン郎」をセットして
湯を沸かす。いつもエンジンをかける瞬間はどきどきする。
お年寄りの車だけにバッテリーが気にかかる。
ぶるぶる震えながら無事に始動したときの安堵感といったらない。

***   ***

窓ガラスの内側に凍り付いて美しく広がる結晶が消える頃には、
熱いコーヒーとフライパンで焼いたパン、目玉焼きで朝食だ。
今日も、神様との根比べの一日が始まった。

(写真:愛嬌者のコミミズク)